自然の中で「座る」時間:心身を整えるマインドフルネス散策のすすめ
はじめに:現代社会と「座る」時間
私たちの日常は、忙しさに追われ、常に何かに駆り立てられているように感じる方も多いかもしれません。仕事中のデスクや、移動中の電車やバス。私たちは一日の多くの時間を「座って」過ごしていると言われます。しかし、その「座る」時間は、心身を休めたり、じっくりと内省したりするための時間とは少し違うのではないでしょうか。
自然の中に身を置き、ただ「座る」という行為は、歩いているときとはまた違った気づきやリフレッシュをもたらしてくれます。この記事では、自然の中での「座る」時間を意識的に持つことの価値と、そこで実践できる簡単なマインドフルネスの方法についてご紹介します。忙しい日々の中でも、ほんの少し立ち止まり、座ってみることで得られる、心穏やかな時間を見つけてみませんか。
なぜ自然の中で「座る」時間が大切なのか
自然の中で「歩く」ことも心身のリフレッシュに大変効果的ですが、「座る」時間を持つことには、また異なるメリットが期待できます。
歩いているときには、どうしても「目的地に到着する」「距離を歩く」といった意識が伴いがちです。それに対し、座ることは行動から解放され、より静的な状態に入ることができます。
- 感覚の深まり: 立ち止まり、座ることで、流れる景色ではなく、目の前や周囲にある小さな自然の変化に気づきやすくなります。鳥のさえずり、葉ずれの音、肌に触れる風の感覚、土の匂いなど、五感がより研ぎ澄まされるのを感じられるかもしれません。
- 心拍と呼吸の安定: 座ってリラックスすることで、心拍が落ち着き、呼吸がより深く、穏やかになることが期待できます。これは副交感神経を優位にし、心身のリラックスを促すと言われています。
- 思考の整理と心の休息: 物理的な動きが減ることで、頭の中の「考え事」から距離を置きやすくなります。ただそこに座って自然を感じることで、雑念が静まり、心が休息する時間を持つことができるでしょう。
自然の中で実践する「座る」マインドフルネス
自然の中で座る時間は、マインドフルネスを実践する絶好の機会です。特別な準備は必要ありません。ベンチでも、切り株でも、安全で心地よいと思える場所に座ってみましょう。
1. 基本の「座る瞑想」を取り入れる
- 心地よい姿勢を見つける: 背筋を軽く伸ばし、肩の力を抜いて、自然体で座ります。手は膝の上や、重ねてお腹の前に置くなど、楽な位置で構いません。
- 呼吸に意識を向ける: 目を軽く閉じるか、視線を少し下に落とします。鼻から入る空気、肺が膨らむ感覚、口や鼻から出ていく空気など、自然な呼吸に意識を向けます。呼吸をコントロールしようとするのではなく、ただ「観察する」ようにしてみてください。
- 雑念を受け流す: 様々な考えが頭に浮かんでくるかもしれませんが、それは自然なことです。それらの考えに囚われず、雲が空を流れるように静かに受け流し、再び呼吸へと意識を戻します。
2. 五感を使って自然を感じる
目を閉じる瞑想が難しければ、目を開けたまま、五感を使って周囲の自然を意識してみましょう。
- 見る: 目の前の葉の色、木肌の模様、空の青さ、雲の形など、視界に入るものを「評価」するのではなく、「そのまま」観察します。
- 聞く: 鳥の鳴き声、風の音、水の流れる音、遠くの生活音など、様々な音に耳を澄ませます。音の強弱や響き方に注意を向けてみましょう。
- 感じる: 肌に触れる風の感覚、太陽の温かさ、座っている場所の硬さや温もりなど、体に感じられる感覚に意識を向けます。
- 嗅ぐ: 土の匂い、木の香り、草花の匂いなど、自然の香りを深く吸い込んでみます。
これらの感覚に一つずつ、あるいは同時に意識を向けることで、今この瞬間に集中し、心穏やかな状態へと導かれることが期待できます。
短時間でもOK:忙しい合間の実践ヒント
「じっと座っている時間なんてない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、自然の中での「座る」マインドフルネスは、ほんの数分でも効果が期待できます。
- 休憩時間の活用: 自然公園のベンチに座って、お昼休憩を取る際に、食事の前に5分だけ目を閉じて呼吸に意識を向けてみる。
- 散策中の立ち寄り: 歩き疲れたと感じたら、無理せず座れる場所を探し、10分だけでも周囲の景色や音に耳を傾けてみる。
- 「座る場所」を決めておく: お気に入りの公園にある特定のベンチなど、「ここに来たら座る」と決めておくと、習慣にしやすいかもしれません。
大切なのは、完璧を目指すのではなく、意図的に「座る」時間を作り、その瞬間の自然と自分自身に意識を向けることです。
「座る」に適した自然散策コースの選び方
自然の中で心地よく「座る」時間を持つためには、場所選びも少し意識してみると良いでしょう。
- 休憩スポットの充実度: ベンチや東屋、広い芝生広場など、座ってゆっくりできる場所が多い公園や遊歩道が適しています。
- 見晴らしや景観: 池や川、遠くの山並みが見える場所、美しい花壇や樹木がある場所など、座って眺めているだけで心が落ち着くような景観がある場所を選ぶと、五感を使ったマインドフルネスが深まります。
- 静けさと安全性: 人通りが多すぎず、落ち着いて過ごせる場所、そして安全に座れる場所を選びましょう。整備された公園や、管理が行き届いた自然遊歩道などがおすすめです。
- アクセス: 自宅や職場からアクセスしやすい場所を選ぶことで、忙しい合間でも気軽に立ち寄ることができます。
例えば、都心近郊の大きな公園内にある湖畔のベンチや、少し高台になった場所にある展望台、河川敷に整備された広いエリアなどは、「座る」マインドフルネスに適した場所が見つけやすいかもしれません。
まとめ:心身のリフレッシュに「座る」時間を取り入れて
忙しい毎日の中で、私たちは無意識のうちに立ち止まることを忘れがちです。しかし、自然の中に身を置き、意図的に「座る」時間を持つことは、心身に穏やかな休息をもたらし、マインドフルネスを深める素晴らしい機会となります。
ただ座って呼吸を整えたり、五感を使って周囲の自然を感じたりする時間は、心のリセットボタンを押すことにつながるかもしれません。ストレスの軽減、集中力の向上、そして心の平穏を取り戻すことに繋がることが期待できます。
壮大な自然を目指す必要はありません。身近な公園や、通勤途中にある小さな緑地でも構いません。ベンチや切り株を見つけたら、少しだけ足を止めて座ってみてください。忙しい日常に、心満たされる穏やかな時間を取り入れるきっかけとなることを願っています。